red data animals
pass ward
アンブリッチの監視の目が厳しくなっている。事態は思ったよりも深刻で慎重さを要した。ホグワーツの人々は連帯を禁止され、集団での行動も取れない始末だ。もちろん外部との連絡も厳しく管理され、それぞれの暖炉の使用記録まで控えられてしまう。
ホグワーツとグリモードプレイスの連絡はパトローナムを使うようにと努めていたが、それでは伝えられる情報に制限が出来てしまう。会話が必要な際などは特にそうだ。
そこでダンブルドアは暖炉に、アンブリッチの管理の外側を抜けられるよう新たな改良を加えた。複雑な説明は割愛するが、各々の暖炉の「秘密の合言葉」と「不死鳥の騎士団内の合言葉」を合わせると新たな回炉が開くのだ。
「オーケー、グリモードプレイスに伝えとく」
「承諾の言葉に軽薄な語彙を使用するな」
スネイプはの軽い返事に眉をひそめる。しかしは気にせずにソファから立ち上がり、スネイプの部屋の暖炉に向かった。
「で、あなたの暖炉の合言葉は?」
「自室を使いたまえ」
「言えないような言葉なのかしら?」
は目を細めて探るような笑みを向ける。スネイプは顎を上げて冷笑を浮かべるが、すぐに顔を顰めた。
「べつに、しかしあまり吹聴するような物でもないだろう」
「たとえば緊急事態が起こったとして、私があなたの暖炉を使わなくちゃいけない場合があったらどうするの?」
「そんな事態は避けたいものだ」
「慎重すぎて悪い事は無いと思うの」
「なるほど」
「ホグワーツの中に騎士団はあなたと私とダンブルドアしかいないんだから。助け合わなくちゃ」
スネイプは若干の思案ののち、短い言葉をつぶやいた。
「ミドル・ロンドン」
「なにそれ。意味は?」
「意味なんて無い。合言葉は存在自体に意味があるんだ」
不満そうな顔のに、スネイプは憮然とした表情で答えた。
「私の合言葉は、まさに愛に溢れてるわよ。聞きたい?」
が思わせぶりな口調でささやくと、スネイプは面倒そうにせせら笑った。
「たとえば緊急事態が起こって、我輩がおまえの暖炉を……使いたくも無いのだがどうしても使わざるを得ない状況になったときの為に……興味も無いのだが……一応聞いておくか」
は楽しそうに笑うと、暖炉の赤い火を背に受けて口を開いた。
「・スネイプ」
呆れて絶句するスネイプに追い討ちをかけるように、「セブルス・の方がお好み?」と微笑む。
もう行け、とスネイプが犬を追い払うような仕草で手のひらを振ると、は笑い声を漏らして緑色の炎の中に身を投じた。