the art
「う、わー……なにこれ」
夕食後、はスネイプの部屋の書棚を物色していた。
スネイプはベッドの上に足を投げ出しヘッドボードに背を預けて新聞を開いてい
たが、視線だけで声の主を確認すると、書棚の前で顔をしかめているが目に
入った。行儀悪く立ったまま本を広げている。
スネイプは心持ち目をすがめてその手元を確認すると、一冊の画集が開かれてい
る。超残虐趣味のイラストレイターは絵の中の少女を鮮やかにいたぶっていた。
「夢に出て来そう……」
「おまえみたいな軟弱な奴にはよっぽどの刺激だろうな」
スネイプは紙面に目を落とし、こともなげに言った。は苦々しい顔をした
まま、それでも画集を広げたままページを手繰っている。
「……聞いておくけど……子供を痛めつけたいって思うの?」
「まさか。……短絡的な発想だな」
「じゃあ、どうして」
「ルシウスが昔置いていったんだ」
「ああ、あの人はこういう乙女っぽい趣味の人よね」は軽く頷いて空を見る
。そしてまたスネイプの顔を見てにやけた。「で、そのまま手元に置いてるのね?
」
「別に、……ああ、そうだな」
「こういうのを見て楽しむんだ。鬱屈した男の内面って恐ろしいわ」
「いや、嫌悪感しか覚えん。……不愉快な物を見て、自分がいまだに気分を害する
ことが出来るのかを確認するために眺めるんだ」
「ややこしいわね。気に入ってるならそれでいいじゃない」
スネイプが気分を害したような表情を見せると、は笑って立ち上がりベッ
ドに歩み寄った。そして彼の膝の上にまたいで座る。
「まあ、ひねくれててあなたらしいわ」
腕を伸ばしたまま彼の肩にかけて背を反らしスネイプと顔を見合わせる。新聞が
がさがさと音を立てたので、スネイプは少し顔をしかめた。
新聞のためには不機嫌な顔をして、でも至近距離で目を見つめても表情ひとつ変
えない男に若干の焦燥を眉を顰めるが、それでも反応を引き出せずあきらめてアゲ
ハは口を開く。
「じゃあ、私に試してみたいって思ってことはある?」
「無いな。お前にその価値があるとは思わん」
「安心した。ゆがんだ性格なうえに、性癖までゆがんでたらさすがの私でも付き合
い方を考えなきゃね」
「ああ、そうかね。……ただ、痛がってるおまえを眺めるのは面白いかもしれんな
」
言うなりスネイプはに口付ける。喜んだ彼女が舌に舌で触れる前に、スネ
イプは受け入れるために薄く開かれた唇を噛む。驚いて身を引こうとする後頭部を
押さえて舌のざらつきを歯でなぞる。
「これだけの事で泣くのか」
やっと唇を開放し目が合うくらいに顔を離すと涙目のがスネイプを睨んで
いた。それを馬鹿にしたように鼻で笑うと彼女の体に両腕を回す。反射的に抱き返
してこようとする腕を一まとめにしてねじり上げた。
「ほかには? 動けぬよう拘束されたいか?」スネイプはの首元に唇を寄せ
、やわらかになぞったかと思うと鎖骨に歯を立てる。「それとも傷でもつけられた
いか」
そしてを見て無表情に言う。
「……楽しんだか? 我輩はおもしろくもなんともないがな」二人の間に落ちてい
る新聞をスネイプが拾い上げ、また広げてつぶやいた。「鬱屈した男の嫌がらせは
酷いんだ」
スネイプが視線を紙面にうつすと、無理やりその顔を両手で挟むなりは口
付ける。強引なキスをして満足そうに微笑んだ。
「そのぶん私が純粋だからバランスは取れてるわね」
「純粋。お前がか」
「あなたよりはね」
スネイプは心底あきれたように苦笑して新聞をめくる。は顔をしかめなが
ら画集を眺め続けた。
「嫌なら見なければいいだろう。人の横で鬱陶しい」
「ゆがんだあなたについていくために、ちょっと学習しようかと思って」
「勝手にしろ」
スネイプは言い捨て、また紙面に視線を戻す。しかし新聞の中に芸術を理由に児
童を性的に搾取していた犯罪者の言い分を掲載したコラムを見つけ、うんざりして
捨てた。
はというと、画集を開いてはいるが、すでにさほどの興味は無いらしく惰
性でページを手繰っているように見えた。スネイプは苦笑する。お互い、芸術を嗜
むほどの感覚は持っていなかったらしい。
そんな事を思ってスネイプがを眺めていると、画集から顔を上げた彼女と
目が合った。の目が細められる。
「芸術なんて、満たされきってヒマを持て余したお貴族様達に任せておけばいいの
よ」
「負け惜しみを言わず、感性が無い事を見とめたらどうだね」
「絵空事を眺めているより、目前の物体に手を伸ばした方がほうがいくらかは生産
的だわ」
の理屈をスネイプは鼻で笑いながらも、避ける気は起きなかった。
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toreba-buraunnの画集の話題に霊感を受けて
2009/10/31
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