My Fair XXXX
ニューヨークでの会議は始まったばかりだが、もうかなりの気力を消耗した。各国は自国の主張を押し通そうと今にも杖を抜かんばかりの勢いで論じている。その上、日頃なれないマグルの装いで居ろと強制されているのだから、更に喧々諤々の雰囲気である。
親睦会という名のディナー(実際は、食文化の違いにより、さらなる溝を深めただけだった)を終え、部屋へ帰った。
はすでにベッドの上にいた。部屋中の明かりをつけたまま眠りこけている。気楽でいいもんだと横目で彼女を見つつ、書類入れをベッドの上に放り投げた。すると、その下にテレビのリモコンがあったようで電源が入ってしまった。どうやら古いミュージカル映画のようで、画面の中では昔の女優が白いドレスを着て踊っている。
ベッドの上のが身じろいだので、テレビの音量を最低まで下げてやった。
彼女をよく見れば、読みかけなのか、古びだ小説が開いたまま伏せて置かれている。そういえば古書店を見つけたなどと言っていたと思い出し、かすれてしまっている本のタイトルを読み取ろうかというところで、は目を開けた。
「遅いお帰りね、セブルス」
起き抜けにしてはしっかりとした声音だった。浅い眠りだったのか、それともタヌキ寝入りだったのか。やや非難めいた口調に肩をすくめて見せると、はそれ以上の追及は諦めたようで、かるく伸びをしテレビに目を留めた。
「オードリーだわ」
は上体を起こすと、画面の中で踊りつづけている女を見た。音量を上げてやると満足そうに顎を上げる。
「なんて映画だったかしら」
「マイフェアレディ」
記憶を探り、簡潔に答えてやったがは不満そうな声を出す。
「そこは、マイフェアって言ってくれるべきじゃないの?」
「冗談でも言うものか」
開かれたままだった小説に気付いたが本を閉じた。
「……ちなみに、その本は?」
「我が愛しの妖精セブルス」
は本の表紙を指し、我輩を見あげて腹に一物ある顔でにやりと笑った。。
「馬鹿者が」
本を彼女から受け取り、ぱらぱらと斜め読みをする。我輩は顔を顰めてその本をの傍に投げ捨てる。話の矛先を変えようとしたら嫌なものを見てしまった。
彼女は声をあげて笑い、満足そうな顔をした。
-------------------------
「我が愛しの妖精フランク」は名作。
2007/9/?