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王様









 私はルシウスマルフォイ、今日はわが国から逃亡した宮廷魔術師を連れ戻すためにやってきた。あんなに可愛がってやってたのに、なんでかれは逃げ出すん だ、まったく。風の噂のとおり、私の探していた人はそこにいた。
 不相応にも玉座についていたセブルススネイプは、2次創作の文章にもまれ、「ファンフィクションフィルター」、つまり「2次創作作家によるキャラクター 設定の改変・捏造」により、薄幸の美少年へと姿を変えていた。
 私を見て怯え体を震わせ椅子を細い手で掴む彼はなかなかすばらしい(くりかえすが、彼は少年だ)。蛇をかたどった飾り杖で打ち据えられている彼はさらに すばらしい。そして玉座の座りごこちとは、もっとすばらしい。私は彼を足下に置き、自己の支配欲を満足させた。

 さて、私は美しくないものは好きではない。たとえ直接自分には関係ないものでも、自分の属する城に汚らしいものが付属していることすら許せない。
 セブルスによると、地下には囚人が数名居るらしい。私は美しいものを好むが、それに被虐と可虐という行為が共属していることを愛してもいる。私の中には ロマンスとバイオレンスが同居しているのだ。

 セブルスを付き従え、嬉々として地下牢への石階段を下りると、うるさいサルの群が騒ぐような鳴き声が聞こえた。どんなに原始的な囚人なんだろうかと思い をめぐらし歩を進めると、サルの群が鉄格子の向こう側ではしゃいでいた。なんということだ、この国はサルまでも法で裁くのか!
 しかしどうやら違うらしい。よく目をこらすと、群の中に大きな塊を見た。「あれはなんだ」とセブルスに質問してみると、「あれは犬だ」と彼はぶっきらぼ うに答えた。セブルスには教育が必要なようだ。

「バカをいいなさい、あんなに大きな犬がいますか」、と再度セブルスに質問してみると、「いいえ申し訳ございません閣下。あれは人間です。囚人です。です が閣下、あれは犬ほどの価値しかありません」と丁寧に答えた。私は教師にむいているのかもしれない。
 そうかそうかとセブルス少年の頭をなでた。ちなみに彼は前述のように、ファンフィクションフィルターにより「清貧に甘んじている美少年の姿」に身を変え ているので、頭を撫でられている真の姿の彼を想像して気分を害してはいけない。少年を想像したまえ、美しい少年を。

 さらに身を乗り出して見ると、囚人は無骨な顔はしているが、それなりに整った顔立ちをしている。サルに囲まれて不機嫌そうな顔をしているが、ストイック なその表情もまた良い。美しく変化したセブルスの顔におどろいている表情もまた趣がある。
 なるほど、セブルスは彼が嫌いらしい。そして彼もセブルスの事を嫌っているらしい。たしかに、サルに囲まれて過ごす事を強要した相手にどう好感をもてと いうはなしだが。
「この部屋にはロマンスが足りないね」
 二人の鉄格子を挟んだにらみ合いに終止符を打ったのは、私の素晴らしい提案だった。彼らは目を剥いて私に注目している。しかしサルはその間も無遠慮にう るさく騒いでいた。サルめ、あとで脳味噌を食ってやる。
「照明はピンクにしよう、肌がきれいに見えるぞ」
 私は使用人を呼び寄せ、的確な指示をだしていった。 セブルスの与える罰には、まったく美と遊び心というものが感じられない。私は拷問よりもいやがらせ が好きだ。

 囚人シリウスブラックには一人ストリップをさせることにした。一時も休まずに大音量で音楽をかけ、牢の壁はすべて赤く塗りつぶした(2,3日はペンキの 臭いで頭が痛いだろう。それもいやがらせだ)。
 彼は着るために服を脱ぎ、また脱ぐために服を着るのだ。無間地獄だな。これは三途の川の石積みに似ているが、こちらのほうが品がある。
 そして、囚人ブラックの一人踊りを、セブルスにむりやり鑑賞させることにした。嫌いな人間に目の前で君の悪い踊りを舞われる者。嫌いな人間の目の前で吐 き気のする踊りを舞わなければならない者。なんてロマンなんだろう。
 セブルスに原稿用紙69枚分の感想文を提出させるのも楽しみだ。彼の字は怒りに震え、ミミズがのたくったようなアーティスティックな字になっていた。そ のレポートを週に1通提出するのが彼のノルマだが、私は1文字も読まずにシュレッダーにかける。普段ならそんな面倒なことは使用人にさせるのだが、かわい い少年セブルスが必死に努力して書き上げた文章をハムスターの寝床に変える作業は、なかなか耽美な味わいがある。ちなみにハムスターはフクロウのエサのた めに繁殖させているもので、別に私がかわいがっているわけではない。

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